第6回:80‘sサウンドの魅力 ~ディスコ・ブームの到来~
いよいよ6回目を迎える今回は、東欧80年代のグルーヴをお届けしましょう。
80年代の音楽と聴いて真っ先に思いつくのはディスコでしょうか。実はここ日本で、ジンギスカンやボニーMに並んでヒットを生んだディスコ・グループが東欧にいます。それが、ハンガリーのニュートン・ファミリー。ハンガリーではNeoton Familiaとして知られています。
ニュートン・ファミリー
「ドン・キホーテ」
ハンガリー 80年
Neoton Familiaは60年代から活動する大御所Együttesですが、70年代後半に女性コーラス・グループKócbabákと合流したあたりからディスコ化。ハンガリーで最も成功したミュージシャンとして、国内外で活躍していきます。
世界のトレンドを追うように、東欧でも70年代後半からディスコ・ブームが到来。ちなみにボニーMは前回紹介したソポト歌謡祭にて、放送禁止だった「ラスプーチン」を披露し、物議を醸しています。
さあ、今回はそんな東欧ディスコの魅力を紹介して参りましょう。
ブーム到来!ディスコを歌う歌手たち
前回、東欧の歌謡曲シーンを紹介しましたが、70年代後半になると、ブームを牽引すべくディスコ路線に転向する歌手が多く出現していきます。
例えばチェコのスターKarel Gottもディスコ化。
Karel Gott
「Bloudím pasáží」
チェコ 78年
ディスコ路線への転換によって成功した歌手もいます。ハンガリーで70年代初頭からプロとして活動してきたJudit Szűcsは、77年の歌謡コンテスト「Metronóm ’77」で第三位となった「Táncolj Még!(意味:もっと踊ろう!)」がヒット。これを機に、翌年には同曲をメインにした、彼女初のアルバムをリリース。「ディスコ・クイーン」のあだ名をつけられ、時代を象徴する歌手になっていきます。
Judit Szűcs
「Táncolj Még!」
ハンガリー 77年
同じくハンガリーで元々ジャズ・シンガーだったBontovics Katiも、70年代後半にディスコ路線に転向して成功します。79年には念願の1stアルバムをリリース。多くの力強いディスコ・ナンバーに混じって収録された、メロウな一曲がオススメです。
Bontovics Kati
「Csak itt és veletek」
ハンガリー 79年
新生代の歌手も登場します。81年にデビューしたチェコのヴォーカル・デュオ、Kamelieは先駆的ディスコ・グループ、ORMをバックに歌い、ヒットを生み出していきます。
Kamélie
「Video disko」
チェコ 83年
ディスコ化するロック
歌手だけではなく、ロック・バンドも流行りのディスコ・サウンドを次々と取り入れていきます。冒頭で触れたNeoton Familiaも、元々はロック・バンド(Együttes)。70年代初頭にはかなりグルーヴィなロックを聴かせてくれています。
Neoton
「Holtidő」
ハンガリー 70年
連載第4回で紹介した、ハンガリーのスーパー・バンド、Locomotiv GTもディスコ路線へ。この路線で海外でも成功し、ディスコ路線の名曲「Veled, Csak Veled」は英語版も制作されています。ちなみにこの英語版は原曲より演奏も歌も格段に良くなっているので、忘れずにチェックしましょう。
Locomotiv GT
「I Had Life」
ハンガリー 80年
歌手と同じく、最初からディスコ路線でデビューするロック・バンドも現れます。ポーランドのKramは76年のデビュー・アルバムからダンサブルなディスコを演奏。
Kram
「Biała Sowa, Biała Dama, Biały Kruk」
ポーランド 76年
東ドイツのKreisも同じく、ディスコ路線でデビューしたバンドです。中でも75年のデビュー・シングルB面だった「Doch Ich Wollt’ Es Wissen」はヒットし、西側への進出も果たしています。
Kreis
「Doch Ich Wollt’ Es Wissen」
東ドイツ 75年
ディスコ・シリーズの誕生
連載第2回で、東欧のジャズ・シリーズを紹介しましたが、ディスコ・ブームが訪れると各国でディスコ・シリーズが誕生していきました。このシリーズのみ収録の曲も多く、侮れない内容になっています。早速紹介していきましょう。
まず、ディスコ・シリーズの代表格と言えるのがポーランドのInterdiscoシリーズ。このコンピのみで聴ける曲が多いのも人気の理由ですが、なんとシリーズのオリジナル・テーマが存在。ワクワクする幕開けを演出してくれます。
Orkiestra PR I TV W Katowicach
「Interdisco Prolog」
ポーランド 77年
このInterdisco 3には、第4回で紹介したGrupa ABCのヴォーカリストHalina Frąckowiakによるコンピのみ収録の曲があり、シリーズの中でも高い人気を誇っています。
Halina Frąckowiak
「Znikąd」
ポーランド 77年
彼女の数ある名曲の中でも、特に素晴らしい一曲です。
テーマ・ソングがあるシリーズといえばもう一つ、ブルガリアのディスコ・シリーズも忘れてはいけません。Vocal Trio “M”なる、このコンピ以外では全く聴くことができない謎のグループが歌うテーマが収録されています。
Vocal Trio “M”
「Disco, Disco (intro)」
ブルガリア 78年
続いて紹介するのが、スロヴァキアのDiskotéka Opusuシリーズ。こちらもコンピのみ収録曲の宝庫です。その代表がこちら。
Eva Máziková & Bezinky
「Vravíš」
スロヴァキア 80年
そもそも歌っているEva Mázikováは、80年代には単体でシングルもアルバムもリリースしていないので、大変貴重な音源と言えるでしょう。
どんどん参りましょう。ルーマニアではInvitație La Discotecăシリーズが存在。こちらのみの主六ではないですが、ほとんど音源を残さず、唯一のアルバムも非常に高値で取引されるGrupul Stereoの一曲が聴けるのは嬉しいですね。
Grupul Stereo
「Coloana infinită」
ルーマニア 85年
ちなみにルーマニアでは歌謡曲シリーズの、Melodiiというものもあるのですが、85年だけ本編とは別に「Dans」と銘打たれた、ダンサブルなディスコをまとめたコンピがリリース。ここでしか聴けない良曲を多数収録しています。
Eva Kiss & Radu Constantin
「Ne intilnim intr-un dans」
ルーマニア 85年
東ドイツのKleeblattは純粋なディスコ・シリーズではありませんが、時代の流行をとらえ、良質ディスコを多数紹介しています。中でも紹介するのは、東ドイツ最重要コンポーザー兼アレンジャー、Günther Fischerによって作れた一曲。ここでしか聴けません。
Marion Scharf
「Willst Du Mich」
東ドイツ 80年
最後に紹介するのは、チェコのディスコ・シリーズ。他とは一線を画した7インチでのシリーズです。中でも、ジャズ・ロック・バンドBohemiaのアルバム未収録曲をレコメンド。
Bohemia
「Co Mi Brání」
チェコ 77年
いかがでしたでしょうか。次回はディスコだけじゃない、80年代の他の音楽も紹介していきたいと思います。それではお楽しみに!