ギタリスト 越川和磨INTERVIEW(後編)

先日、新宿レッドクロスのYouTubeチャンネルにて、2009年に行なわれた『360°完全開放GIG』の映像がアーカイブ放送されたことも記憶に新しい伝説のロックバンド、毛皮のマリーズ。そのギタリストを務め、現在ではTHE PRETTY TONESやTHE杉並組、LTD EXHAUST IIなどで活躍中の「西くん」こと、越川和磨さんにインタビュー!

インタビュー後編では、ジョニー・ラモーンのプレイスタイルの解説や、西さんがジョニーを意識してプレイした意外な楽曲や、時を越えてなお、多くのキッズに影響を与え続けるラモーンズの魅力について語っていただきました。
プレイスタイルの解説は、動画と一緒にお楽しみください!

☆インタビューの前編はコチラ

“グググ感”と“ラモーン角度”

●西さんから見た、ジョニーのギターの特徴的な点はどのようなところですか?

やっぱり、代名詞とも言えるダウンピッキングだよね!むしろ、その一点しかない。
ギターを弾くときには、左手をどう動かすかに目が行きがちだけど、右手の動かし方でも音って変わる。
例えば『電撃バップ』のイントロも、普通にBPM通りに弾くとリズムが整っていてきれいだけど、面白くはないじゃん?でも、グググっと右手に力を込めてダウンピッキングで弾くと、リズムは崩れるしBPMは整わないけど、ラモーンズらしさが出る。俺はこの弾き方を「グググ感」と呼んでいる。

●「グググ感」を出すコツはなんですか?

とにかく力を込める!
テクニックっていうよりもフィジカルだよね。すごく疲れるけど、どこまで耐えられるかっていう運動みたいなもの。頭の悪い中学生みたいだけど、それがいい!

今思ったんだけど、グググ感を出そうとすると、自然と弾き方もジョニーのようなフォームになるんじゃないかな。
(立ち上がり、デモンストレーションを始める西さん)
うん!気合を入れて弾こうとするとおのずとジョニーのフォームになる!普通に弾こうとすると、右手に力が込められないから必然的に腰が落ちるよね。体が「ラモーン角度」になってるのが分かる?
実はジョニーのあのフォームは、理にかなっているのかもしれない!

普通に弾いている例。
ラモーンズらしさは感じられない。

「ラモーン角度」で弾いている例。
しっかりと足を開き、腰を落として弾くことで、ジョニーのような気迫が出ている。

ダウンピッキングでしか出せない音がある

●西さんがこれまで演奏をしてきた曲で、グググ感を意識した曲はありますか?

分かりやすいところでいうと、毛皮のマリーズの『アンダーマイヘア』。「この曲のイントロはグググ感全開で!」っていうオーダーがあったから、全部ダウンピッキングで弾いてる。

●これはまさしくといった感じですね!

そうそう。初期のマリーズはとにかく気合とフィジカルが大事だったから、それが音にも出てるよね。
他には、ギターで参加したシシド・カフカの『朝までSugar Me』。

このAメロは『I Wanna Be Sedated』を意識してる。
ジョニーは全部ダウンピッキングで弾いてはいるんだけど、曲によってバリエーションがあるから、『アンダーマイヘア』のような全力のパンクソングでなくても、グググ感を取り入れることがある。
あとは同じパターンだと、マリーズの『すてきなモリー』のイントロもそう。スタジオ版だと分かりにくいかもしれないけど、ライブ版を聴いてもらえると分かりやすいと思う。

●その2曲はとても意外でした!

曲を聴いて「このAコードはラモーンズだな!」って思ったときには、ジョニーのギターを参考にしてる。
グググ感を意識した曲は他にもあるから、ぜひ探しながら聴いてみて!

マリーズ解散後は、ギターも音楽もやめるつもりだった

●西さんは、ギターだけでなく、髪型や革ジャンといったファッション面でも独自のスタイルをお持ちだと思うのですが、こだわっていることはありますか?

ファッションについては、特にこうしようって決めてやってるわけではないかな。
髪型なんて思い立ったときに自分で切ったり、気分でブリーチしたりしてるだけだし。だから美容室にも行かない。単に美容師と話をするのが苦手だからっていうのもあるんだけど、自分でやれば自由だからね。
でも、自分に何が似合うのかを分かってるってのは大事だと思う。ラモーンズの革ジャンも、ピストルズの破れた服も、普通だったらおかしな格好だけど、彼らはそのスタイルでかっこよく街を歩けてるじゃん?パンクの人たちって本当に自分を魅せるのが上手い。
俺が今、40歳手前で革ジャンにスキニーっていう格好をしてるのも、おかしいとは思う。実際、この格好で地元に帰って同級生に会ったら浮くし。
でも、1ミリも恥ずかしいとは思ってないよ。全部似合ってると思うし、好きだからやってる。

●そのスタイルは、これからもずっと続けていきますか?

もちろん!
これはライフワークだからね。お腹が空いたらご飯を食べるのと同じ。
音楽に関してもそう。ご飯を食べたり、服を着たりするのと同じようにギターを弾く。
少し前までは、「音楽は生活を越えた先にあるもの」っていう風に切り離して考えてたから悩むこともあったんだけど、全部生活の一部として捉えられるようになったよね。

●そう思えるようになったのには、何かきっかけがあったんですか?

2012年に、お姉ちゃんが住んでるアメリカに行ったのがきっかけ。
当時はマリーズが解散した後の時期で、もうギターも音楽も辞めるつもりでいたんだけど、そのことをアメリカ人に話したら、「俺たちにとって音楽は、生まれた時から流れてるもので、共に暮らし、共に成長していくもの。なのにどうして日本人は音楽を遂行しようとするの?」って言われた。
これまでは「音楽様が!」「ロック様が!」って、自分とは別軸で進んでいく大層なものだと思ってたんだけど、同じ時代に生きて、ギターを弾いてるわけだから、自分にだって音楽を生み出す可能性があるって気付いたんだよね。それなら、別にここで音楽を辞めなくても良いのかなと思えるようになった。
それで日本に帰ったら、ちょうど日高さんからTHE STARBEMSでギターを弾かないかってオファーが来たから、やってみることにした。
でも、アメリカ行ってなかったら絶対断ってたし、今だってギターを弾いてなかったかもしれない。

20年後の中学生がラモーンズを見ても、同じように「かっこいい!」って言うと思う

●ジョニーにもし会えたらどんなことを話してみたいですか?

ジョニー自身が好きなギタリストや、聴いてきた音楽の話をしてみたいかな。あんまり彼のルーツの話って聞いたことがなかったから。
こんなにもギタリストを量産した人はいないと思うよ。ジョニーに出会ってなかったら、ギターを始めてなかったって人は多いんじゃないかな。

●西さんもその一人ですか?

うん。初めて見たときに「これなら俺にもできそう!」って思ったからね!
この気持ちって、音楽的なこと以上に、人間の本能とか遺伝子に直接訴えかけてくるような要素から来てると思うんだよね。だから20年後の中学生が見ても、同じように「かっこいい!」って言うと思う。それはもう未来永劫変わらないはず。
そういう意味で、ラモーンズは本当に偉大なバンドだと思うよ。

●ありがとうございました!


プロフィール
越川和磨(Kazuma Koshikawa)/ギタリスト
2003年に毛皮のマリーズを結成し、2010年アルバム『毛皮のマリーズ』でメジャーデビュー。2011年、毛皮のマリーズ解散。
2012年、日高央(元BEAT CRUSADERS)率いるTHE STARBEMSに加入。2018年までギターを務める。
現在はTHE PRETTY TONES、THE杉並組、LTD EXHAUST IIなどで活動中。
パンクでダイナミックなプレイスタイルが特徴で、数々のキッズたちを魅了し続けている。

撮影協力:高円寺P.I.G.studio https://www.pig-studio.info/

INTERVIEW タムラモーン
PHOTO カレー・ラモーン
ASSITANT サエキティ

タイトルとURLをコピーしました